- Photographer, Designer, Musician, Painter -
Jesse Kojima
フォトグラファー、デザイナー、ミュージシャン、ペインターなど様々な顔を持つアーティスト、Jesse Kojima。彼の生み出すアートの背景にあるもの、そしてその中に流れる強い信念の源流を探ってみた。
-ご出身はどちらですか?
J:神奈川県鎌倉市。鎌倉っていっても藤沢寄りなんだよね。江ノ電で言ったら鎌倉高校前っていう駅。
七里ヶ浜と江ノ島の間ぐらい。家の周りは何もないけど、海まで歩いて10分かからないみたいな。
-鎌倉在住の頃はバンドはされていたんですか?
J:やってたね。もっと遡ると親父が元々バンドのギタリストやってて、サーフィンとスケートもやってたから、おれも物心ついた頃にはスケートやってて、最初はサーフィンできないからボディボードから始めた。だから土日や休みの日は必ず海に行ってたし、家族旅行も海があるところしか行ったことなかった。
-その頃は絵は描いていましたか?
J:一切描いてない。おれは自分で絵が描けると思ってなかったから。絵心もないと思ってたし。
だからおれはずっと若い頃はサーフィンとスケートと音楽。あんまり言ってないんだけど、高校生まではプロサーファー目指してた。全日本の支部予選に一人絶対勝てない奴がいて、ちょっとこれはダメだなと思って、そこからバンドに没頭していった感じだね。
-絵が描けると気づいたきっかけは何だったんですか?
J:絵を描くようになったのは最近だよ。元々は写真展で作品や写真集、Tシャツ作って売ってたんだけど、やっぱり作品を売るってすごく難しくて。それには色々と理由があると思うんだけど、そもそも日本で写真を買うっていう文化がないし、写真って安くないからそのハードルも高い。それに写真って複製ができるから、一点ものじゃないところにおれはすごく引っかかってて。写真に手を加えて一点ものにしたいっていうところから絵はスタートしてるんだよね。
だから最初は自分の写真に手を加えてたんだけど、それが結構面白くて、キャンバスに描けるんじゃないかって思ったのが最初のきっかけ。
-バイブスで作ってみようと。
J:そう。絵がすごく面白くなったのは、写真ってフィルムでも撮るけど、結局その後の処理がデジタルなんだけど、それに対して絵って超アナログじゃん。全部手作業だし、最後の最後で失敗したらもう一回真っ白にしなきゃいけないっていう、写真のデジタル感と真逆のところにある絵が自分の中でハマったというか。使う頭のスイッチも全然違うし、デザインの仕事と写真の仕事って並行してやれるけど、絵を描く時はそれができなくて、他の仕事を一切やらないようにしないと取り掛かれなかったり。それはすごく新鮮だったかな。
-JUST NOISEの名義で絵と洋服を発表されていますが、音楽、洋服、アート、写真、それぞれご自身の中での意識の違いはありますか?
J:違いはないね、ほぼほぼ。どんな形でアウトプットするかの違いだけで、考えてることは一緒。だけど、やっぱり写真に関しては、一緒にセッションするモデルとの融合というか化学反応で作品が生まれていくけど、服や絵に関しては自分一人で全部やってるから、自分のやりたいことを100%表現しやすいっていうところがすごくあるっていうのは思った。JUST NOISEの個展をやった時に”写真よりも世界観出てますね”って言ってくれる人が多かったから、そういう風に伝わってるんだと思う。JUST NOISEに関しては、自分が若い頃、子供の頃にやられた音楽だったりカルチャーだったりを今の時代に変換して出すみたいなことをやってるって感じ。
-先日CRYSTAL LAKEの写真を撮ってもらったときに、Jesseさんの写真やばいなって思ったんですよ。
J:写真、やばいよ。おれはいつもそう思ってる。
おれはオフィシャルとしてライブの写真はあまり撮らないじゃん?でもおれは絶対オフィシャルよりやばい写真を撮るって思っていつもやってる。ただお客さんが求めてる写真とマネージメントとかレコード会社が求めてる写真と、アーティスト側が良いっていう写真ってやっぱり違うわけじゃん。おれはアーティスト側にはフィットするなってすごく思ってるけど、お客さんが本当に見たいものかとか、マネージメントが見たいものかって思うと、ちょっと違うなって思ってる。でもそこは別にいいって思ってる。アーティスト側に気に入ってもらえればそれでいいやと思うし、だったらオフィシャルで入らないっていうのはあるかもしれない。
-みんなが聴きたいなって思うものって、おれたちも音楽でやってなかったりするんですよ。もっとアーティスティックで、Jesseさんの写真からもそれを感じるんですよね。どこかにアピールしているんじゃなくて、抽象的かもしれないけど、感銘を受けるというかアートとしてかっこいいというか。
J:おれは写真を撮る上で肝に銘じてることなんだけど、人を撮るときに感情や体温が伝わらなきゃいけないって思ってるんだよね。ここ2、3年、青が強い写真が流行ってた時期があって、おれはそれがすごく嫌だった。人間ぽくないって思って。おれは写真から音楽が聞こえて欲しいし、その空間の湿気や被写体の体温を感じて欲しいから、そこで温かさとか、もちろん冷たい瞬間もあるかもしれないど、人間のリアルな部分を撮りたいって思ってるから、そこが繋がってるかな。
-撮ってもらった写真で後ろ向いてるものがあって、こういうの撮ってもらいたいたかったんだよなって思って。後ろ向きの写真って撮らないじゃないですか。
J:それは元々俺がステージにいて撮られてた側だから撮れるっていうのはすごく感じてる。自分はステージで楽器弾いてた時にこういう画を撮ってほしかったってすごく思ってたし、未だにあるから。ステージに立っている人ってこういうの欲しいでしょっていうのは、いわゆるライブカメラマンって人たちは、いくら長くライブを撮ってる人だって、ステージで撮られたことない人ばかりだから。だからそこは自分の強いところだって思ってる。
-絵や写真、洋服などの意識の違いを聞いてきましたが、共通しているこだわりはあるんでしょうか?
J:結局写真もそうだし、絵もそうだけど、学校出て誰かに教わったわけじゃないから、今まで生きてきてかっこいいと思った感覚しか出せないんだよね。それって何かというと、おれの場合は音楽。パンクだったりロックだったり。それとサーフィンとかスケートのカルチャーしかないんだよね。おれはその狭いところでしか生きてこなかったから、それしか知らなくて。そのかっこいいっていう感覚を出してる。それを写真として出すか、デザインとして出すか、絵として出すかっていう違いなだけかな。
-自分もそうです。音楽を学校で学んでなくて楽譜も書けないし、それがコンプレックスなんですよ。
J:おれもそれはコンプレックスだと思ってる。写真の学校出て、師匠がいて、専門的なこと知ってる人におれはどう太刀打ちしたらいいのかマジでわからなかった。だけど今更どうにもできないし、そうなったら自分が生きてきてかっこいいって思った感覚、それって似てる人はいるけど100%同じ人はいないから、それをおれは全面に出し続けて、それに共感してくれる人を増やしていくしかないなって思ってやってる。
-今の仕事だったり表現していることをカテゴライズすることはできますか?
J:難しいね。仕事のメインはもちろん写真なんだけど、極力おれはフォトグラファーって名乗りたくなくて。写真展やる時とか、写真の仕事を依頼されて、クライアントワークをするときはフォトグラファーですって言うけど、写真撮ってる人だとしか思われないのが嫌だから、極力アーティストですって言ってる。おれはフォトグラファーとして何が何でも成功したいという感じではなくて、別に何でもいいんだよね。おれのゴールとしては、世界の人におれという存在を知ってもらうってことで、元々はそれが音楽だったから。バンドをやってそれを通して自分のことを知ってもらいたいってところからスタートしてた。残念ながらバンドは終わっちゃって違う形にはなってるけど、今それがたまたま写真になって絵になって服になってる。だからカテゴライズするのはすごく難しいだよね。だからアーティストって言うようにしてるんだけど。
-自分たちは今C.U.L.T.U.R.Eっていう名義でやってて、言葉にするとありふれてるから埋もれがちなんですけど、本質ってカルチャーにあると思っているんです。自分も音楽で育って、全部そこから影響受けて、周りの人間が活動的だったり、何かを作っていたり、不良だとかエリートだとか色んな人が混ざって、生きてる中で最終的に何かを作ってるやつがかっこよくて、残ってるよなと。しかも独学とか教わる関係なく良いものは良いじゃないですか。それがカルチャーだと思っていて、しかもそこに生きてる人たちって体現してるじゃないですか。もはやその人の色が出ることが一番重要だなってこの歳になって思えるようになって。今回C.U.L.T.U.R.Eの洋服もとことんデザイン性落としてるんですよ。なぜかと言うと、今Jesse君が着た時に椅子に寄りかかっただけで絵になるっていうのを求めていたんです。そうやって自身がカルチャーを体現するとか、あるいはカルチャーを作り出すっていう意識は持っていますか?
J:それはずっと思ってる。おれはそれをSHELFSでやりたいって言ってたんだけど、カルチャーを作るって少人数じゃできないし、一つのジャンルの集まりじゃできないんだよね。2000年くらいのエアジャムの時ってカルチャーができたわけじゃん。あれって何でできたかっていうと、音楽とファッションの大きな波があったからで。おれはそれをもう一回やりたいってずっと思ってる。そのためには自分が今までヤラれてきたものを伝えていく作業って必要じゃん。だからおれはJUST NOISEをやってるっていうのもあるし、そのためには音楽する仲間がいて、服作る仲間がいて、アートする奴らがいて。そうやって面白い奴らで波を作っていかなきゃいけないってずっと思ってる。だから一人で何かをやるよりも、誰かと何かをやるっていうところにフォーカスするようになったかな。
おれらってやっぱりみんなカルチャーにヤラれてるわけじゃん。それが途絶えちゃうのってすごく勿体無いし、自分が十代前半の時にヤラれたものって未だに変わらずかっこいいわけじゃん。そんなにヤラれたものって他にないからさ。今は今で若い子たちにとってのそういうものがあるんだろうけど、自分がヤラれたものを今の若い子達に伝えたい。伝えてあげるって表現はおこがましく聞こえるかもしれないんだけど、伝えてく作業っていうのは絶対に必要だし、おれらにしかできないものってあるから。それってこの仕事をしてるからだったり、この環境にいられる人の一つの役割なんじゃないかなって思ってる。
-仕事をしているときとプライベートで洋服に対する考え方に違いはありますか?
J:ないね。全部一緒。
-では自分が着る洋服に対して意識してることはありますか?
J:着るもので一番意識してるのは、サイズ感。それが全てだと思ってる。自分の体型に合うサイズを知っている人はすごくかっこいいって思う。だからブランドとかに全くこだわりはないし、何でもいいと思ってて。何を着るかよりもどう着るか、自分が見せたい着方ができるサイズ選びを一番気をつけてる。あとは、「物」よりも「誰」が作ってるのかっていうので物を選んでる。
-JUST NOISEにそれを落とし込むときのこだわりは?
J:JUST NOISEのコンセプトは、自分がやヤラれたパンクっていうところにあるから、その匂いをさせつつ、その時々で80sぽさとか90sぽさ出してるかな。昔のパンクの服をただそのまま今出しても全然面白くないから、バランス的には80%のオーセンティックさと20%の今の良さを混ぜたいなって思ってる。
-C.U.L.T.U.R.Eは先ほど言ったようにデザイン性を落としていて、その人の色が出るようにしたいっていうのが狙いなんですよ。生地もバンドTシャツみたいにカジュアルなものじゃなくて、大人なゴージャスに見えるように作っていて、ある人が着た瞬間に”ハマっていく”っていうような。今JesseさんがC.U.L.T.U.R.Eの服を着てもうすでにハマってる印象を受けているんです。実際にC.U.L.T.U.R.Eを着てみた印象について教えてください。
J:確かにハマってる感じするね。まず最初の印象は生地が良いなってすごく思った。それは触る前に見て思った。この前ライブでCrystal Lakeのメンバーが着てたのを見て、生地感が違うなって。それで今実際着て、サイズ感もそうだけど形もすごく良いなって思った。それに柔らかい。
あと、着る人によって表情が変わるってすごく良いなって思った。結局洋服ってこういうイメージで着てくださいとか、着る側がこういうイメージでしょって着るものが多いわけじゃん。だからデザイン性を極限まで落として着る人によって見え方が変わるってすごくおれは面白いなって思う。
-今後やってみたいことはありますか?
J:今年1回目の絵の個展をやって、一年間作品作りをして見えたことがあって。もう一回原点に帰るっていうか、元は自分の写真に手を加えて一点ものにしたいっていうところからスタートしたから、やっぱりそれを極めようっていうことを今やってる。おれがやる絵って新しい技法でも何でもないし、ステンシル吹くなんて誰でもできるけど、自分の写真に自分で手を加えて作品を作るっていうのは自分にしかできないことだから。だからそれを広げていくことを、今年と来年やっていこうと思ってる。
-今自身がやっていることや今の自分、つまり自身のアイデンティティーの状態を一言で表現するなら何でしょうか?
J:”進化の過程”です。